【サラ・パレツキー】女性版ハードボイルド『ミッドナイト・ララバイ』

アメリカの推理小説作家サラ・パレツキーの「女私立探偵V・I・ウォーショースキー」シリーズ14作目『ミッドナイト・ララバイHardball)』。

イタリアで長い休暇を過ごして帰ってきたヴィクのもとに、失踪人探しの依頼が飛びこんでくるところから物語ははじまります。

 

あらすじ:
40年前の吹雪の夜、彼は忽然とシカゴの町から姿を消した……偶然のきっかけで、消えた黒人青年の叔母の依頼を受けたわたしは、昔の失踪事件を調べることになる。時間の壁だけが障害かと思われた調査だが、失踪の影にはもうひとつの事件が隠されていた。隠蔽されてきた唾棄すべき事実の露見を怖れる何者かが妨害を始め、わたしの身辺に次々とトラブルが!どんな圧力にも屈しない、V・I・ウォーショースキーの真骨頂!

引用元:ハヤカワ文庫『ミッドナイト・ララバイ』

 

40年前の失踪事件を調べることになったはいいけど、手がかりはほとんど残ってないし、失踪人の母親は非協力的。持ち前の根性で事件を捜査していくと、事件の裏に警察の腐敗が絡んでいることを知る。

崇拝する父親トニーも関わっていたのではないかと、気を揉むヴィク。読んでるこちらも緊張して、頁をめくる手に力がこもってしまいました。

小さな事件がアメリカ社会の恥部を露見させ、大きな事件へとつながっていく。「V・I・ウォーショースキー」シリーズお馴染みの展開です。体を張って真っ向から立ち向かうヴィクに共感させられるハードボイルドらしい作品でした。

ヴィクの従妹ペトラだけは、どうしても好きになれませんでした(裕福な家庭で甘やかされて育ったためか、なんでも自分の思いどおりになると信じていて、人の境界線を土足で踏み越えてくるあたりが特に)。

またキング牧師が率いた公民権運動が物語のカギとなっているなど、作品をとおして、アメリカの過去と現在を垣間見ることができます。

 

Amazon: ミッドナイト・ララバイ (ハヤカワ文庫)

著者:サラ・パレツキー
訳者:山本やよい
出版:早川書房(ハヤカワ文庫)

-サラ・パレツキー, 外国人作家
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