【ドロシー・L・セイヤーズ】ピーター・ウィムジイ卿『誰の死体?』

ドロシー・L・セイヤーズ(英国女性推理作家)といえば「ピーター・ウィムジイ卿」ものを思い浮かべる人が多いと思います。このシリーズは日本での紹介が遅かったこともあり、アガサ・クリスティの「エルキュール・ポアロ」などと比べると認知度は低いかもしれません。

神経質でありながらも飄々とした貴族探偵「ピーター・ウィムジイ卿」の魅力を、多くの人に知っていただければ嬉しいです。

今回紹介するのは、ミステリの女王と称されるセイヤーズ女史が上梓したシリーズ長篇第一作目「誰の死体?」です。

 

あらすじ:
実直な建築家が住むフラットの浴室に、ある朝見知らぬ男の死体が出現した。場所柄男は素っ裸で、身につけているものといえば、金縁の鼻眼鏡と金鎖のみ。いったいこれは誰の死体なのか?卓抜した謎の魅力とウイットに富む会話、そして、この一作が初登場となる貴族探偵ピーター・ウィムジイ卿。クリスティと並ぶミステリの女王がモダンなセンスを駆使して贈る会心の長編第一作!

引用元:創元推理文庫『誰の死体?』

 

格調高い文章、物語の構成展開が素晴らしい作品。筋道がとおっていてトリック自体は平凡なので、感の良い読者が慎重に読み進めていけば謎解きは可能だと思います。また人物描写にも優れていて、どの登場人物も大変魅力的です。デンヴァー先代公妃(ピーター卿の母)は知的でユーモアがあり、ピーター卿の如才ない饒舌っぷりは母親ゆずりで間違いありません。誠実な人柄のパーカー警部、忠実で有能な従僕バンターも好ましいです。しかしたら、神経質で精神破綻気味なピーター卿が少々鼻につくかもしれませんが……。

1923年に上梓されましたが、ユーモアがあり古臭さを感じさせない作品です。

 

Amazon: 誰の死体? (創元推理文庫)

著者:ドロシー・L・セイヤーズ
訳者:浅羽莢子
出版:東京創元社(創元推理文庫)

-ドロシー・L・セイヤーズ, 外国人作家
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