【ドロシー・L・セイヤーズ】ピーター・ウィムジイ卿『雲なす証言』

ドロシー・L・セイヤーズ(英国女性推理作家)といえば「ピーター・ウィムジイ卿」ものを思い浮かべる人が多いと思います。このシリーズは日本での紹介が遅かったこともあり、アガサ・クリスティの「エルキュール・ポアロ」などと比べると認知度は低いかもしれません。

神経質でありながらも飄々とした貴族探偵「ピーター・ウィムジイ卿」の魅力を、多くの人に知っていただければ嬉しいです。

今回紹介するのは、ミステリの女王と称されるセイヤーズ女史が上梓したシリーズ長篇第二作目「雲なす証言」です。

 

あらすじ:
ピーター・ウィムジイ卿の兄ジェラルドが殺人容疑で逮捕された。しかも、被害者は妹メアリの婚約者だという。お家の大事にピーター卿は悲劇の舞台へと駆けつけたが、待っていたのは、家族の証言すら信じることができない雲を摑むような事件の状況だった……!兄の無実を証明すべく東奔西走するピーター卿の名推理と、思いがけない冒険の数々。活気に満ちた物語が展開する第二長編。

引用元:創元推理文庫『雲なす証言』

 

本書「雲なす証言」が出版されたのは今から約100年ほど前(1923年)。古典的探偵小説と受け取る方もおられるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

デンヴァー公爵(ピーター卿の兄ジェラルド)の殺人容疑をめぐる裁判の様子は、厳粛でありながらもどこかコミカルに描かれており、物語に引き込まれてしまいます。

身の危険を顧みずに主人を救おうとしたバンター。いよいよもう駄目だと思ったとき、ピーター卿の口から洩れた心からの謝罪のことば。

——なあバンター。こんな目にあわせて、本当に申し訳なく思っている(作中引用/p265)

「主人と従僕」の関係の中に、固い絆を感じずにはいられませんでした。

 

Amazon: 雲なす証言 (創元推理文庫)

著者:ドロシー・L・セイヤーズ
訳者:浅羽莢子
出版:東京創元社(創元推理文庫)

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