マージェリー・アリンガムの愛すべき探偵「アルバート・キャンピオン氏」は、1929年に上梓された『ブラックダドリーでの犯罪(The Crime at Black Dudley)』に初登場します。
それからアリンガム女史は、キャンピオン氏を主人公とした名作を次々と発表し、クリスティ、セイヤーズ、マーシュと並んで「英国四大女流作家」と称されるようになりました。
今回紹介するのは、表題作「窓辺の老人」を含む7作品をまとめた短篇集になります。
概要:
クリスティらと並び、英国四大女流ミステリ作家と称されるアリンガム。その巨匠が生んだ名探偵キャンピオン氏の魅力を存分に味わえる、粒ぞろいの短編集。袋小路で起きた不可解な事件の謎を解く「ボーダーライン事件」や、20年間毎日7時間半も社交クラブの窓辺にすわり続けているという伝説をもつ老人をめぐる、素っ頓狂な事件を描く表題作など計7編のほか、著者エッセイを併録。
引用元:創元推理文庫『キャンピオン氏の事件簿Ⅰ 窓辺の老人』
”つややかな黄色い髪に痩せた顔、長身でひょろ長い脚”という様相のキャンピオン氏。貴族的で軽やかな語り口が好ましいです。
——彼の真価がわかっていないんですよ。あなたは頭が固すぎるんだ。誰にでも同じ美徳を期待する(作中引用/p248)
”警察が市井の探偵に議論をふっかけ、超人的な知識、推理力をもって謎を解き明かしていく”というのも、派手さこそないですが、上品で良いです。
平淡な物語で起伏が乏しいため、ハラハラドキドキする展開を好む方には物足りないかもしれません。古き良き英国ミステリです。
著者:マージェリー・アリンガム
訳者:猪俣美江子
出版:東京創元社(創元推理文庫)
- ボーダーライン事件
- 窓辺の老人
- 懐かしの我が家
- 怪盗<疑問符>
- 未亡人
- 行動の意味
- 犬の日